分かりやすい提案書を
パワーポイントで作成するためのコツとは
記事の内容
「提案書」の呼び方について
パワーポイント資料の作成代行サービスを行う弊社には、様々なご依頼があります。
その中で、あるお客様が「プレゼン資料」と呼ぶ資料を、他のお客様は「提案書」と呼び、また別のお客様は「営業資料」と呼ぶなど、業界や会社などによってその呼称は様々です。
例えば、プレゼン資料を「説明を補足するための補助ツール」と定義することも可能ですが、それをもってお客様と議論することはありません。
ワインを入れるために作られた「デキャンタ」に、水を入れれば「水差し」と呼ばれ、花を飾れば「花瓶」と呼ばれるように、作成する資料をどのように定義づけるかよりも、どう使われるかの方が重要
だと考えるからです。
そういった意味で、お客様が特定の資料をどう呼ぶかに注目するのではなく、その用途に注目してサービスを提供しております。
この記事においても、提案書やプレゼン資料、営業資料などを厳密に区別せず、それらは「何かを提案する目的で作られる資料」という部分は共通していることから「提案資料」という言葉に統一して話しを進めていきます。
厳密に区別してる会社の方が少ないよね
慣習に従ってなんとなくそう読んでいる的な感じだよな
まずは「分かりやすい提案資料」とは何かを実例で確認
分かりやすい提案資料の作り方を解説している書籍やネット記事が多数存在しますが、当然ながら解説できることと、実際に作れることとの間には大きな乖離があります。
例えば、やり方を解説できる=実践できるということであれば、ダイエットに失敗する人は誰もいません。
(ズボッ)
(グサッ)
というわけで、まずは弊社が考える分かりやすい提案資料をパワーポイントで作成いたしましたので、下記の画像をクリックしてご覧いただければと思います。
ご覧いただき「そうでもないな」と感じるようであれば、この記事をお読みいただいてもお役に立てない可能性が高いです。
逆に「たしかに分かりやすい」と感じていただけるようであれば、このような資料を作成するためのコツを以下で解説させていただきます。
分かりやすい提案資料を作成するコツは「プロセスドリブン」
分かりやすい提案資料を作るコツとしてよくある内容をピックアップすると、
・相手の課題を抽出
・解決策の根拠を示す
・結論を先に
・文章は短く簡潔に
・フォントは見やすいメイリオを使用
・色は4色以内に抑える
など、
資料の構成からデザインに至るまで、様々なものがあります。
たしかによく聞く内容ね
分かりやすい提案資料はおそらく上記でピックアップした要素が多かれ少なかれ組み込まれた形になっているはずです。
なら正しいってことじゃん
はい、正しいです。
ただ、今回ピックアップしたような正しい形式を知ったとして、それで分かりやすい提案資料を作ることができるでしょうか。
言われたとおりやってるんだけどなんかうまくいかないのよね
そうなんです。
分かりやすい提案資料の形式を示されることで、作り方が分かったような気になりますが、いざ実践しようとすると戸惑うことが多いと思います。
なぜなら、いくら分かりやすい提案資料の形式を知ったところで、そこに至るプロセスを実行できなければ作成することが困難になるからです。
つまり、分かりやすい提案資料を作るためには「形式」にこだわるよりも、そこに至る「手順」にこだわる必要がある
ということです。
このことを弊社では「プロセスドリブン」と表現しています。
ちなみにドリブンとは、driveの過去分詞で直訳すると「駆動される」というような意味になります。
データに基づいて意思決定を行う「データドリブン」や、顧客ニーズを最優先に考える「カスタマードリブン」など、特にビジネス界隈でよく使われる用語となります。
分かりやすい提案資料を作るための7つの手順
では、ここから分かりやすい提案資料をパワーポイントで作るための7つの手順をご紹介したいと思います。
1.ターゲットを明確化する
2.主張を明確化する
3.提案資料の形式を決める
4.各スライドのタイトルを決める
5.各スライドの結論を決める
6.結論を補足する
7.デザインを最適化する
となります。
それではそれぞれ具体的に説明させていただきます。
1.ターゲットを明確化する
特に資料作りに慣れていない人にありがちですが、資料を作り始めるにあたって「誰に」を明確化せず、「何を」「どうやって」という部分に意識が向きがち
です。
誰にって、だいたいクライアントとかでしょ普通
例えば、クライアントと仮定した場合その人は、提案を受けることに積極的なのでしょうか、消極的なのでしょうか。
もし積極的なのであればメリットをより強調したメリット獲得型の提案を行い、逆に消極的なのであればデメリットが少ないことを強調したリスク回避型の提案にするなど、相手のスタンスによって作る資料の方向性が変わります。
クライアントの社内文化が減点主義的なのか
加点主義的なのかによっても変わるな
そうですね。
仮に減点主義的なカルチャーがある会社に提案するのであれば、大ヒットが期待できる提案よりも、失敗するリスクが少ない提案の方が受け入れてもらいやすいということになります。
もっと分かりやすい例でいえば、相手が業界に詳しい人なのか、そうではないのかによって、資料内で使える言葉や概念が変わります。
詳しい人であれば専門用語や概念を使って効率的に説明することができますが、詳しくない人であれば、用語解説を随所で挟むなどして丁寧に説明することが求められます。
したがって、資料を作り始める段階で「誰に」を曖昧にしてしまうと提案内容にブレが生じてしまい、的外れの提案をしてしまったという結果になりかねません。
そのような事態を回避するためにも、まずはじめに「誰に」を明確化することで、相手軸で提案内容を検討し始める必要があります。
社内で同じ課題を共有してたとしても
対応の仕方は人それぞれだもんね
分かりやすい提案資料とは要するに「相手に最適化した資料」
ということになりますので、「相手が誰なのか」を明確にすることが資料を作るうえで必須の要件となります。
2.主張を明確化する
資料作りがうまく進まないと悩む人の中には「伝えたい内容」で悩んでいるのか、「伝え方」で悩んでいるのかが曖昧になっている人がいます。
何から手をつければいいか分からない時はそんな感じだな
この問題を解決する最も簡単な方法は、資料を作るうえで「相手に伝えたいことは何か」を、一言でまとめてみること
です。
こうすることで「伝えたい内容(主張)」が明確になりますので、あとはそれを伝えるためにどのように資料を構成すれば良いのかという部分にリソースを集中させることができます。
また、一言でまとめることで自分が提案しようとしている内容を客観視することも可能になります。
例えば、一言でまとめた結果が「PDCAサイクルの重要性」だった場合はどうでしょうか。
今さら説明されてもって感じかな
そうですよね。
ビジネスパーソンに提案する内容としてはあまりに月並みすぎて面白みがありません。
であるならば、別の切り口を検討した方がよさそうだなと資料を作り始める前に判断することができます。
また、主張を明確化するうえでその根拠なども整理しておく必要
があります。
その時に有効なのがSDSやPREPなどのフレームワークを活用することです。
例えば、先にご紹介した提案資料の場合でいえば、
Point(要点):
分かりやすい提案資料を作るためには「形式」ではなく「手順」にこだわる必要がある。
Reason(理由):
なぜなら、分かりやすい提案資料の形式を知るだけでは作ることが困難だから。
Example(例示):
実際、分かりやすい提案資料の形式に関する情報が、書籍やネットに溢れているのにも関わらず、作り方について悩んでいる人が多い。
Point(結論):
つまり、分かりやすい提案資料を結果論的に解説するのではなく、そこに至るプロセスを解説することが必要。
というようなまとめ方ができます。主張が見えない資料は見る人のモチベーションを喪失させる
ことにつながりますので主張を明確化することが、分かりやすい提案資料を作るうえでの大前提ということになります。
3.提案資料の形式を決める
ターゲットと主張が明確になったら、それを伝えるためにどのような資料が必要かを検討していきます。
提案資料なんだから
パワーポイントで作っておけば間違いないっしょ
仮にパワーポイントでつくる場合でも、主に読んでもらうことを前提とするのか、見てもらうことを前提とするのかによって作り方が変わることになります。
例えば、先にご紹介した提案資料を主に見てもらうことが前提のプレゼン資料にするのであれば、下記のように作る方が望ましいです。
プレゼン資料は話しを補足するための補助ツール
ですので、スライドは極力シンプルに表現する方が見やすくなります。
どうせ説明するわけだから余計な情報はない方がいいよね
そのとおりです。
逆に今回のようにWEB上に掲載する場合やダウンロード配布する、メールでクライアントに送付するなど、説明できないことを前提にするのであれば、長文をつかって内容をフォローしていく必要があります。
口頭での説明が無いなら
せめて文章がないと理解できないからな
場合によっては1から10まで説明する必要がある提案内容であるにも関わらず、説明する機会が得られないこともあります。
その場合は、パワーポイントで作るよりもWordを使ってナレーティブな文章(物事のありさまを順を追って説明する文章)で説明する方が良い場合も
あります。
つまり、これから作ろうとしている提案資料の用途をどのように想定するかによって、作り方が変わることを意味します。
相手がどうしたいと考えているかも重要ね
そのとおりです。
仮に提案を受ける人がプレゼンしてもらいたいと考えているにも関わらず、文章だらけの資料を作成してしまうと「蛇足の多い分かりにくい資料」という印象を与えることになってしまいます。
ここでも「誰に」を明確化することが効いてくるわけだな
そいうことになります。
そういった意味でも、ご紹介した手順のどれかだけを取り入れるのではなく、順を追って作成することが重要になります。
4.各スライドのタイトルを決める
次に、スライドを1枚ずつ仕上げていくのではなく各スライドのタイトルをそれぞれ決めていきます。
なんで?一枚ずつ作っていけばいいじゃん
そっちの方がやりやすいよな
分かりにくい資料の特徴のひとつに資料全体が「情報の羅列になっている」というものがあります。
これは伝えたい情報を順番に並べていった結果、資料が完成しました的なイメージです。
ダメなの?
ダメです。
なぜなら、情報の羅列は資料を見る人に多大な認知負荷を与えることになる
からです。
要するに分かりにくいと思われちゃうわけね
記憶しづらくなると言い換えてもいいかもしれません。
この問題を回避するために、まずは各スライドのタイトルをそれぞれ決めていきます。
こうすることで、資料全体の流れを決めていきます。
各情報をつなぎ合わせて流れをつくれば、資料が格段に分かりやすくなります。
「いざ都へ(1338)室町幕府」のように、ただの数字の羅列にストーリーを与えて記憶しやすくする語呂合わせのようなイメージです。
また、スライドタイトルにはコンテンツに対する「フリ」の役割があります。
そのため、見る人の興味を喚起できるような、より魅力的なタイトルになるように時間をかけて検討を行います。
タイトルをつける時のポイントは「具体化」「疑問形」「数字の挿入」です。
例えば、
サービスのご紹介
↓
14年以上お客様のプレゼン支援を行ってきたプレゼンエージェントのご紹介
貴社のプレゼン資料の問題点
↓
なぜ貴社のプレゼン資料では伝わらないのか?
東京の歴史について
↓
東京15区時代から23区時代へ
などのようなイメージです。
確かに後のタイトルの方が興味が湧くかも
5.各スライドの結論を決める
次に各スライドの結論を明示していきます。
なぜ結論を示していく必要があるかといえば、提案資料に限らずどんなコミュニケーション手段でも「伝える」ことが100%、相手に「伝わる」ことが無いからです。
例えば、友人から
「昨日、海で遊んできた」
と聞いた場合、どのようなイメージが思い浮かびますか?
海辺を散歩とか
焼きそば食べて、ビール飲んでビール飲んで、ビールだな
まあ、色々ですよね。
つまり、受け取った言葉の解釈は相手次第
ということになります。
これが、
「売上をアップします」
「リードを増やします」
「コストを削減します」
などであった場合も同様で、
伝えた本人と受け取った相手の間には多かれ少なかれギャップが生じることを意味します。
このギャップを少しでも狭めるために結論を明示することで「つまり、このスライドで伝えたいことはこういうことですよ」ということを相手に示し、こちらの意図を伝わりやすくします。
また、各スライドに結論を明示する理由がもうひとつあります。
それはビジネスパーソンの誰もが「極力資料は見たくない」と考えている
からです。
いうまでもなく現代は情報過多であり、処理しなければならない情報が身の回りに溢れています。
クライアントの資料……後輩の日報……上司から送られてきたメール……あげたらきりないかも
見たいマンガ……ゲームの続き……SNSのチェック……
たしかにあげたらきりがない
つまり、いま抱えている情報ですら処理しきれていない人がほとんどであり、新しい情報はいつでもウェルカムな人は稀ということになります。
このことから、極力資料を見たくない人たちに対し結論を明示することで、資料を読み解く手助けを行います。
結論があれば要点を掴みやすくなるからな
6.結論を補足する
各スライドに結論を明示することで、意図を明確化し、資料を読み解くキッカケを相手に与えていくわけですが、結論を文章で示すだけでは不十分な場合が多いです。
先ほど例示した、
「昨日、海で遊んできた」
という言葉の場合、
その言葉と共に下記の写真がそえられていれば、言葉の意味がより明確になります。
また、「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがありますが、この言葉を聞いただけでは、その理由は想像しづらいです。
しかし、下記のような図解化されたコンテンツが挿入されることで結論に納得できるかどうかは別としても、何が言いたいのかは理解できるようになります。
このように、各スライドの結論が決まったらそれを「どのように補足すればそれが伝わりやすくなるのか」という視点でコンテンツ
を作成していきます。
このコンテンツは文章だけで表現するよりも極力ビジュアル化する方が望ましいです。
そうすることでより直感的な理解を促すことが可能になります。
ビジュアル化することで資料を見る人の注意を惹きつけるためのアイキャッチにもなります。
ただし、ダウンロード配布やメールでの送信など、説明を前提としない資料の場合はコメントを付記します。
7.デザインを最適化する
デザインに対する評価は相対的なものなので、どんなシチュエーションでも有効な絶対的に優れたデザインというものは存在しません。
例えば、次のスライドはデザイン的に優れていると言えるでしょうか?
まあ整ってる感じはするな
たしかにそうですね。
内容や見せ方もよく計算されているので、優れたデザインといえるかもしません。
では、仮にこの資料が社内会議向けに作られた資料だとしたらどうでしょうか?
やりすぎじゃない?
そうなんです。
この資料を社内会議で提出したら、資料作りが上手な人という評価をもらう前に、暇な人なのかな?と疑われてしまいます。
同じように、クライアントから急ぎで資料を依頼されているにも関わらずこの資料を提出したら、失笑を買う可能性が高いです。
つまり、効率が優先される社内資料や、急ぎの対応を求めるクライアントに提出する資料のデザインとしては不向きであるといえます。
デザインを作り込むことが常に善ではないってことだな
ただし、どんな資料に対しても必ず行うべきデザインがあります。
それは、見やすくすることです。資料を見やすくデザインするためのコツは「削る」「空ける」「揃える」を徹底すること
です。
詳細は下記の記事をご覧いただければ実際の手順をご確認いただくことができます。
以上が、分かりやすい提案資料を作るための7つの手順となります。
資料作成が上手い人の特徴は手順にこだわること
弊社で資料作成研修などを実施させていただく時に「資料作りが上手い人の特徴って何かありますか?」というようなご質問をいただくことがあります。
そういった場合、
「それは手順にこだわる人です」
と、回答しております。
一流のスポーツ選手の中にルーティンにこだわる人が多いように、資料作成においても高いパフォーマンスを維持するためには、そこに至るプロセスにこだわる必要があります。
これは科学的にも証明されているようで、それぞれの行動だけでは結果に及ぼす影響が小さくても、それらが手順として連動することで、集中力を高めたり、コンディションを整えることが可能になるようです。
今回ご紹介した7つの手順は絶対的に正しい方法というわけではありません。
場合によっては、主張を一番先に検討することもありえますし、結論を決めてからタイトルを導く場合もあります。
これは、提案内容やシチューエーションによって様々なアプローチが考えられるためです。
今回、ご紹介させていただいた7つの手順を参考にご自身の環境にあったベストプロセスを模索していただければと思います。
間違いなくいえることは、思いついたことをただ羅列したり、ネットで調べた情報を付け焼き刃的に寄せ集めて資料を作っても、分かりやすい提案資料にはなりにくい
ということです。