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新卒採用のミスマッチを防ぐために
説明会でプレゼンすべきこと

就活生に何をプレゼンすれば良いのか

ミスマッチが生まれるのはバーゲニングパワーの差が原因

合同企業説明会の会場に行くと、まるでバーゲンセール会場かのように、各ブースをPOPで飾り立て、一人でも多くの学生に足をとめてもらおうと担当者の方々が呼び込みを行っています。


この状況をひと目見れば、バーゲニングパワー(交渉力)が、企業側、学生側のどちらに分があるかは一目瞭然です。

では、将来の新卒社員となる彼らが持つバーゲニングパワーとは具体的にどのような要素で構成されているのでしょうか?


構成要素1:
選択肢はいくらでもあること

いうまでもなく彼らの多くは引く手あまたであり、今の会社に固執する理由がありません。


構成要素2:
会社が容易に解雇できないこと

「静かな退職」という言葉でも注目されていますが、必要最低限の業務だけこなしていれば、会社はそれ以上何もできないことを彼らは知っています。


構成要素3:
パワハラなどの理不尽はSNSで晒すことができること

一昔前のようにパワハラを駆使して仕事に駆り立てたり、退職するように仕向けたりなどすれば、彼らはSNSを使って発信することができてしまいます。


構成要素4:
「安定」と「平穏」があれば満足すること

安定とは要するに、お休みやお給料など入社前に約束した待遇を保証し続けてくれること。

平穏とは、心理的負荷を極力ゼロにしてもらうこと(心理的安全性を確保してくれること)。

基本的にこの2つのプライオリティが高いので、出世や昇給などをちらつかせてやる気にさせることは難しくなります。


構成要素5:
新卒であることに企業側が価値を見いだしていること

新卒であることそのものに企業側が価値を見いだす以上、現在の需給はバランスを失っており、自分たちの存在そのものが希少であるということを彼らは知っています。

以上、新卒社員の方が有利な点を5つピックアップしてみました。

当然ながら、上記に該当せず主体的でやる気に満ちた新卒社員がいるのは事実です。

企業側にとって問題なのは、今はやる気のある新卒社員も上記のような選択肢をいつでも容易にとりうる環境が存在するということです。

企業側は不利な立場を強いられているってことだな

ミスマッチを無くす唯一の方法は彼らの要求に屈服すること

人材マネジメントを行う中で「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(やらなければならないこと)」という言葉を意識しているリーダーの方も多いかと思います。

その言葉に従えば、新卒社員のやりたいこと(Will)と会社が求めること(Must)を一致させれば、ミスマッチを無くすことが可能となります。

しかし、それが何を意味しているかといえば、彼らの要求を完全に受け入れることを意味します。

そんなの無理じゃない?

そう無理なんです。

当然ながら新卒社員のWillと会社が求めるMustが完全一致することはありえません。

新卒社員のWillをこっち側に寄せてくればいんじゃね?

たしかにそうなのですが、前述したバーゲニングパワーの違いにより、新卒社員が自ら妥協する理由は現状ではまったくありません。

ですので、ミスマッチを無くすとか防ぐという幻想は改めるべきであり、できることは極力減らすこと、ただそれだけです。

ミスマッチは必然的に発生するものだと認識することが重要です。

なぜなら、「なぜミスマッチが発生するのか?」という疑問をもってしまうと、答えのない袋小路に陥ってしまうからです。

現在、マネジメントの中心を担う層はロストジェネレーション(就職氷河期を経験した世代)と呼ばれる方々が多いと思います。

その人たちが新人の時に経験したマネジメントは、現在ではまったく通用しないものとなっています。

昔はパワハラテイストの上意下達マネジメントが
デフォルトだからな

あなたの代わりはいくらでもいるって言葉が
チラチラ見えるやつですね

現在、部下との接し方で推奨されている、

フラットな視点で、部下の話しに耳を傾け、合意形成を図る。

というようなマネジメント方針は、現在の多くのリーダーはやった経験も、された経験もありません。

今と同じように人手不足だった高度経済成長期やバブル期にマネジメント業務を経験した人であれば、それなりの経験値をお持ちだと思います。

ただ、当たり前ですがそういった方々はご引退なさっている人がほとんどだと思います。

したがって、ほとんどの人に経験が無いことをやる以上、望まない結果(ミスマッチ)が発生するのは、致し方ないことであると割り切るしかありません。

人材マネジメントの方針を言語化してプレゼンする

でも「ミスマッチはしかたがない」という結論だと発展性がなくない?

そうでしょうか?

できないものはできないとはっきり認識できれば、できることにリソースを集中させることが可能になります。

ミスマッチを減らすために採用前にできることは、会社のマネジメント方針を言語化して伝えることです。

リクルートマネジメントソリューションズが行った調査によると、新卒社員が辞めたいと思った理由で最も多かったものは「仕事にやりがい・意義を感じない」というものです。

給与などの条件に不満をもって辞める人も多いですが、これは雇用契約どおりに対応しているのであればどうすることもできません。

条件が不満って言われてもはじめから言ってんじゃんことね

しかし、「仕事にやりがい・意義を感じさせる」ことについては、マネジメントレベルでどうにかできる部分もあります。

そのために、会社として「あなたをこのようにマネジメントしていきますよ」ということを説明会でプレゼンしていきます。

やりがいなら先輩社員のインタビューとかで説明してるけどな

あれだと弱いです。

就活中は同じ業界の、同じような会社の、同じようなプレゼンを何度も見聞きすることになりますので、どの会社も同じようなことを言っているように感じます。

その証拠に、採用サイトなどで同業他社の先輩インタビューを覗いてみてください。

自社の社員と同じような「やりがい」を口にしてるはずです。

つまり、プレゼンすべきは「やりがいや意義」そのものではなく、それを引き出すために会社として新卒社員に対し、どのような取り組みを行っているかということになります。

就活生が聴きたい人材マネジメントの方針とは?

人材マネジメントの基本方針(ポリシー)を明文化している会社も多いと思いますが、その中には「多様性の尊重」や「誠実に向き合う」など様々なものがあると思います。

しかし、就活生が聴きたいのはそういったマクロ視点の抽象的な方針ではありません。

聴きたいのはもっとミクロな部分で、「自分の上司になる人が、自分に対してどう接してくるのか」ということです。

そんなの誰が上司になるかによって違うんじゃない

いわゆる上司ガチャですね。

この部分をガチャとして放置している会社なのか、それともなんとかマネージしようとしている会社なのかが、ひとつの分かれ目になるかと思います。

そもそも「会社の部下に対するマネジメント方針はなんですか?」と質問されて答えることができるでしょうか?

おそらく多くのリーダーは「会社の方針って何?」と答えに窮するはずです。

なぜなら、部下への接し方はリーダーの裁量に任されていることが多いからです。

例えば、はじめてチームを率いる立場になった時に「メンバーの話しをよく聴くように」と、上司などからアドバイスされることが多いと思います。

それに対して「具体的にどうすれば?」と質問すると、

「それを考えるのがリーダーの役目だろ」と禅問答のような答えが返ってくることがあります。

実際、弊社で採用ピッチ資料の作成代行させていただく時に「御社ではどのようなマネジメント方針をとられていますか?」と質問して、即答していただくことは稀です。

しかし、採用される側からすると自分に対してどういうマネジメントが行われるかはとても重要な問題となります。

特に、ファーストキャリアになるであろう新卒社員にとってはなおさらです。

よくある例として「失敗を恐れずなんにでも挑戦できる職場です」的なものがあります。

しかし、これは方針というより実態の伴わない精神論に近いことが多いと思います。

もし、これを方針として打ち出すのであれば例えば、

「失敗をレポート化して共有すると3万円のインセンティブが発生する制度が当社にはあります」



「このように失敗にインセンティブを付与することで試行錯誤をしやすい職場環境になっています」



「つまり、皆さんが挑戦することによって給与を増やし、成長を促すという方針が当社にはあります」

などのように、制度として設計されていれば「挑戦を促す会社」というプレゼンは、就活生に対し説得力を持つことになります。

このように会社の実態に即したマネジメント方針を言語化してプレゼンすることができれば、就活生は入社後の自分を想像しやすくなります。

結果、ミスマッチを減らすキッカケを与えることにつながります。

人材マネジメントの方針をどのようにプレゼンすべきか?

自社のマネジメント方針が言語化できたら、実際にプレゼンを行っていく訳ですが、伝え方にもコツがあります。

それはFAB形式で伝えていくことです。

FAB形式とはFeatures(特徴)→Advantages(優位性)→Benefits(便益)の頭文字をとったものです。

なぜこれが重要かというと、他社との差別化を意識しすぎてしまい、就活生にとって価値を感じにくい特徴をピックアップしてしまうことがあるからです。

つまり、新卒社員にとってベネフィットを感じやすい自社の特徴はなんだろうという視点が重要になります。

ここで、FABを使ったプレゼン例を3つほどご紹介させていただきます。

プレゼン例①

プレゼン例②

プレゼン例③

以上が、自社のマネジメント方針を言語化し、FAB形式でプレゼンした場合の例となります。

入社後のイメージがしやすくなるね

イメージが具体化されるとその会社を選ぶ動機にもなるしな

伝える内容を具体化することで期待と実態の乖離を狭める

当然ながら、説明会の限られた時間の中で会社の実態をすべて具体的に説明することは不可能です。

そのせいか、説明会でのプレゼンはあらゆる可能性を残すために具体的な表現を極力さけ、就活生の解釈に幅を持たせる抽象的な説明になってしまいがちです。

このことが、他社との違いをより分かりにくくさせる要因にもなっています。

例えば、選挙演説で、

「経済成長を加速させます」

という候補者よりも、

「消費税を5%に減税し皆さんの可処分所得を増やすことで消費を活性化し、経済成長を加速させます」

という候補者の方が、未来をイメージしやすくなります。

もちろん、具体化するだけで実行が伴わなければリスクを負うことにもつながります。

そして、具体化した提案内容に魅力を感じてもらえなければ、その段階で候補から脱落することにもつながります。

しかしながら、新卒採用においてミスマッチを減らすという観点でいえば、就活生の期待と会社の実態の間にある距離をいかに狭めるかが重要となります。

そのためには、就活生に自己分析を求めるように、自社に対して自社分析を就活生の目線で行うことで、自社の実態を具体的に表現することが求められます。

曖昧にプレゼンしておいて、とにかく採用予定人数を揃えることを目的化してしまうと、ミスマッチが増えるとともに、はじめにお伝えしたバーゲニングパワーが発動されてしまうリスクを高めることにもつながります。

採用前にリスクを負うか、採用後にリスクを負うかの違いだな