就活生が本当に知りたい事とは?
【新卒採用担当者必見】
記事の内容
就活生が聞きたいと言っていることは本当に聞きたいことなのか?
採用ピッチ資料作成代行業務を通じて関わる、新卒採用のご担当者から「学生が本当に知りたいことってなんでしょう?」というような質問をいただくことがあります。
例えば、就活生が企業に聞きたいこと(重視するポイント)をアンケートすると、
・具体的な仕事内容
・キャリアプラン
・求める人材像
・社風や雰囲気
などが、どのアンケートでも上位にきますが、これらは本当に学生が聞きたいことなのでしょうか?
これは学生に限った話しではありませんが、自分の欲求を正確に言語化することは誰にとっても容易ではありません。
iPhoneが登場するまで、iPhoneのようなものを欲しいと言っていた人が、ほとんどいなかったように、目の前に提示されるまで、自分の欲求に気がつかないということは多いと思います。
特に、はじめて経験することであれば尚更、自分の欲求よりも場の雰囲気を優先させるのではないでしょうか?
じゃあ、アンケートで聞きたいって言ってることは嘘?
当然、嘘ではありませんが「強いて聞かれればこういうことかな?」というのが実態ではないかと思われます。
最近の学生に対する評価の中でよく耳にするのが「素直で良い子が多い」というものがあります。
その素直でよい子たちが「こう答えておけば無難」という模範解答を示しているだけという可能性が高いです。
このことから、アンケートで顕在化した学生の疑問に答えていくという選択は、一見合理的なように思われますが、必ずしもそうとはいえません。
今この記事を読んでいることが、その証拠といえます。
アンケートから得られた結果をもとに、学生の疑問に答えているはずなのに、何故か反応が芳しくなく、学生が本当に聞きたいことってなんだろう?という疑問が芽生えたからこそ、この記事に辿り着いたはずだからです。
学生自身が何を聞けばいいのか分かっていない?
リクナビが就活を経験した300名に対して行ったアンケート
で『就活を進める上で、「就活の軸」を考えておくことは必要だと思いますか?』との設問に対し、86.3%の人が「はい」つまり、就活の軸が必要であると回答しています。
また、就活のノウハウを紹介する本やサイトには「まずは自己分析を行うこと」ということが、基本の基として必ず紹介されています。
これらのことから、就活生は自己分析を行い、自分なりの軸を持った上で就活を行うことが当たり前という暗黙の了解があります。
そんな学生がしてくる質問だからこそ、本当に聞きたいことを聞いているのだろうと採用担当者の方は、無意識的に考えてしまいがちです。
でもさっきのアンケートの話しからすると
違うっていうんだろ?
はい。そのとおりです。
正確にいえば、自己分析を行い確固たる就活軸を持って就活をしている学生の質問であれば、本当に聞きたいことを聞いている可能性が高いということになりますが、そうでなければ怪しいということになります。
では、明確な就活軸を持って就活をしている学生の割合はどのくらいでしょうか?
これについてはそれらしいデータが確認できず、仮に就活生から「持っている」という回答が得られたとしても、そもそもその認識が正しいのかどうかを、どうやって確かめるのかという問題もあります。
また、新卒採用を長年担当されている方であれば肌感覚として「持っている学生の方が少ないだろう」というように感じていられるのではないでしょうか?現在の学生を含むZ世代の特徴のひとつとして「自己肯定感が低い」
というものが一般論としてあります。
これは、インターネットやSNSがあることが当たり前になった時代に生まれ育ったことで、他者の成功や美しい部分などポジティブな情報が目につきやすくなり、自分とのギャップが可視化しやすくなったことが、ひとつの原因とされています。
そして、アルゴリズムによって個人の趣味嗜好に合った情報がどんどん流れてくることに慣れ親しんでいるため、選択の機会が少なく「自分で考えて決める」ことのハードルが、上の世代に比べ高くなっているといえます。そんな自己肯定感が低く、決めることが苦手な傾向が強い学生が、就活だからという理由だけで、自分の価値観(就活軸)を明確にし、表現することができるでしょうか?
当然ながら、軸が定まらなければ質問もブレることになります。
つまり、多くの学生にとって何を聞けばいいのか分からないというのが本音
であり、アンケート結果や質問に対して答えていくことは、極々一部の学生にしか役に立たないということになります。
自己分析もデキない学生は本当に必要ないのか?
でも自己分析もできないような学生を採用する必要ある?
そういった考えも確かにあるとは思いますが、自分自身を理解し価値観が明確な学生のみを採用するということは、現状では理想論に近いと思います。
いうまでもなく、現状多くの業界で人手不足、売り手市場となっています。
この状況下で、就活軸が明確な学生だけを引きつけられるほど魅力的な会社
がどのくらいあり、自分の会社がその中のひとつだと言い切る自信があるでしょうか?
いわゆる「最近の学生」は、自己分析もできない特殊な人間なのではなく、生まれ育った時代が多少異なり、多少異なった環境に適応してきただけで、年長世代と何も変わりません。
彼らの力を必要としている以上、彼らに寄せていく姿勢も必要になります。
就活生の聞きたいことは3つのフェーズで変わる
これまで就活生を一緒くたにして話しを進めてきましたが、学生の聞きたいことは大きく分けると3つのフェーズで変わります。
3つのフェーズとは就活時期の初期、中期、後期であり、どの時期の学生を対象とするかによって、重点的に伝えるべき情報が変わります。
就活初期の場合
学生の興味:自分に合う企業はどこなのか?
提供すべき情報:学生に自社を意識してもらうための情報
就活中期の場合
学生の興味:ピックアップした企業は本当に正しいのか?
提供すべき情報:学生の不安材料をひとつひとつ潰していく情報
就活後期の場合
学生の興味:最終的にどこを選べば間違いないのか?
提供すべき情報:自社への意思決定を促す情報
このように企業目線でいえば、中期、後期についてはテーブルの上に載っている状態(学生に選ばれている状態)ですので、学生のニーズも初期段階に比べれば顕在化しています。今回は、ニーズが潜在化していてよく分からない初期段階において、自社が選ばれるためにどんな情報を提供すべきか
について、話しを続けていきたいと思います。
就活中期以降については、下記の記事で重点的にプレゼンすべき内容を解説しています。
学生に自社を意識してもらうための情報とは?
『ネタバレ消費』という言葉が注目されるようになって久しいですが、タイパ至上主義と相まって、Z世代を紹介する文脈で語られることが多い特徴です。
これらの用語を解説するコンテンツが他にたくさんありますので詳細は省きますが、安価で大量の情報に接することが可能になった環境で育ったことにより、自分に興味の無いことに出会うリスク(時間を使ってしまうリスク)を、極力排除したいという考え方になります。
このような価値観が通底することによって「未体験」よりも「追体験」を好む傾向
が、年長世代よりも強くなります。
未体験のことにハラハラ、ドキドキするよりも、SNSなどを通じて他者から経験を共有してもらうことで、あらかじめ評価が担保されたものを選ぶというようなイメージとなります。
俺は先の展開を知った上で
映画を見るなんて考えられないけどな
私はちょっと分かるな。
先が分からないって単純にストレス
このような価値観が醸成されている学生に対して提供すべき、自社を意識してもらうための情報とは何かというと、共感性の高い経験談を中心とした自社ならではの事例
ということになります。
これは学生が入社後に感じる不安に対して、会社としてどのように対処して、どのようなフィードバックを行っているのかなどを、ストーリー仕立てで紹介していきます。
たとえば、いわゆる配属ガチャや上司ガチャに対して会社としてどのような制度設計をして対処しているかや、人事評価に対してどのように客観性を保っているか。
または、研修で出遅れた先輩社員Aさんをどのようにフォローしていったかや、社員個人のキャリア形成(資格取得など)をどのようにサポートしているかなど、企業によって様々な事例を掘り起こすことが可能になります。
ここでのポイントは、学生が入社後の自分を追体験できるような具体的な情報を、ストーリー仕立てでいかに紹介していくか
ということになります。
これは、どのように伝達するか(HP上の動画なのかプレゼンなのか など)によっても変わってきますので、一概に言い切ることが難しくなりますが、間違いなく言えることは独自性の無い情報を、ただ羅列するだけでは意味がないということです。
独自性がないと他社との違いが分かんなくなるからな
そうですね。
差別化を図るためには情報に独自性が必要となり、共感の高めるためにはストーリーが必要になります。
そこに絶対的な正解は無いってことね
そうなります。
ただ、ヒントになるのが次でご紹介する就活軸を定義してそこに自社の事例を当てはめていく方法です。
就活軸を提供して自社の事例を当てはめる
前述したZ世代の特徴で、その他によくあげられるものとして「答えは考えるものではなく探すもの」という意識が強いということがあります。
このことから、就活軸を自分で考えて決めなければならないというストレスから解放
してあげられるような、役立つ就活軸(答え)を企業側から提案していくという選択肢が考えられます。
例えば?
採用ピッチ資料作成代行サービスを行う弊社がオススメしている就活軸は、職務設計の中核五次元です。
これは、アメリカの心理学者ハックマンとオールダムが提唱したもので、仕事にやりがいを見いだすことや、モチベーションを高めるために必要な要素を5つに分解しています。
その5つは下記になります。
1.スキルの多様性
単調な作業の繰り返しではなく、様々なスキルが要求される仕事であること。
2.タスクの完結性
全体の中の一部分だけを担うのではなく、始めから終わりまで一貫して関わることができる仕事であること。
3.タスクの重要性
やることの意義を見いだしやすい仕事であること。
4.自律性
進め方などを自分で決めることできる仕事であること。
5.フィードバック
結果やプロセスに対して適切な評価が得られる仕事であること。
う〜ん…いまいちピンとこない
その場合は、逆を想像してみてください。
たとえば、求められるスキルに多様性が無く、単調な作業の繰り返しだった場合はどうでしょう?
あまり、モチベーションが高まる感じがしないのではないでしょうか?
フィードバックもせっかく頑張って結果をだしたのに給料などの人事評価にまったく反映されない会社だったらどうでしょう?
やる気を無くす結果につながります。
つまり、この5つの要素が満たされる仕事であるかどうかが、とても重要であることがお分かりいただけるのでないかと思います。
そして、自社に入社することでこの5つの要素がどのように満たされていくのかを、具体的な事例を使って訴求
していきます。
提案する就活軸とその中身によって
学生の判断をサポートする訳ね
フィードバックの相性が学生との相性
5つの中で特に重要なのが「フィードバック」です。
「このような事象に対して、このようなフィードバックを行う会社ですよ」ということを訴求していくことで、互いの相性を探っていきます。極論すればフィードバックの相性が学生との相性ということになります。
たとえば、ある仕事の成果に対して3万円のインセンティブを与える会社があった場合、それをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは学生次第です。
その仕事の成果に対して「3万円も」もらえるのかと考える人もいれば、「3万円しか」と考える人もいます。
また、3万円お給料が増えることよりも、フルリモートでの勤務が選択可能になったり、休みが増えることの方が良いと考える人もいます。
そして、このような結果に対するフィードバックだけではなく、仕事のプロセスに対するフィードバックの相性も重要です。
社員の挑戦を推奨しないと明言する会社は存在しないと思いますが、そんな会社の中には余計なことをせずに言ったことを、淡々とこなしてくれさえすればいいからという会社も存在します。
その場合、積極的に挑戦することを否定するようなフィードバックが行われることになりますので、ダブルバインド(矛盾したメッセージを受け取る状態)が発生することになります。
この問題を解決するためには、「このような挑戦を評価する会社ですよ」ということを、具体的な事例を使って示すことで、「挑戦」という言葉の解釈を学生と共有
していきます。
以上のように、職務設計の中核五次元を軸に具体的な事例を示す
ことで、学生の会社に対する評価が定まることはもちろん、学生自身が何を望んでいるのかということを確かめていくキッカケを与えることになり、学生の就活軸を定めるサポートを行うことも可能になります。
そして、そのような情報を提供してくれた会社が、学生の記憶に残りやすくなるのは必然といえます。
会社が意識されれば次のアプローチもしやすくなるしね